この記事の目次
前書き
ここではより実践的な、ガッシュ絵具(不透明な絵の具)を使用したグラデーションの塗り方を説明します。その前に、いくつか基本的なことをまとめておきます。
ガッシュ絵の具、アクリル絵の具、アクリルガッシュ絵の具の違い
ガッシュ絵の具に良く似た画材に、アクリル絵の具、アクリルガッシュ絵の具があります。
名前にガッシュが付くか、アクリルが付くか、その両方が付くか3パターンありますが、それぞれ全く別の画材です。
間違って購入しないよう、(透明水彩も含めて)簡単な一覧表を作りましたので、参考にしていただけたらと思います。
水彩絵の具一覧表
この一覧表の中で、描き味について不透明(マット)としているものは、塗ったときに下地を覆い隠してしまうタイプの絵の具(不透明な絵の具)になります。
このブログで紹介しているテクニックは、(不透明な絵の具)を使用するときのグラデーションの塗り方です。そのため、ガッシュ絵の具だけでなく、ポスターカラーやアクリルガッシュにも十分応用が可能です。(アクリル絵の具は透明絵の具なので、異なる別の方法が適しています。)
ガッシュ絵の具の種類
古くからあるガッシュ絵の具ですが、アクリル系絵の具が主流となった今でも、複数メーカーから製品が出ています。ここでは自分が主に使っているものをご紹介します。ガッシュ絵の具同士であれば、これらは単独で使っても、混ぜて使っても特に問題はないようです。(同じ不透明のガッシュ絵の具とアクリルガッシュ絵の具を混ぜて使えるかどうか、これはまだ試したことがありません。)
1.Turner Design Gouache(ターナーデザインガッシュ)
2.Gouache Nickker(ニッカー ガッシュ)2013年~2015年頃の名称
3.Holbein Artists Gouache(ホルベイン アーチストガッシュ)
4.Rowney Egg Tempera(ラウニー エッグテンペラ)2000年頃の名称
使い勝手
個人的な感想になりますが、ご紹介しますと、
1.Turner Design Gouache(ターナーデザインガッシュ)は、特にクセがなく扱いやすいです。
11ml入りと25ml入りチューブがあり、25ml入りはよく消費する色を購入しています。
特に良く使う白はネットで25ml入り数本セットで販売されていてお得でした。
2.Gouache Nickker(ニッカー ガッシュ)は、最近(といっても2015年前後に)使い始めました。これも特にクセもなく扱いやすいです。11mlと量は少ないですが、価格は安かったように記憶しています。2020年4月現在では新製品のシリーズが出ているようです。(写真は2015年に購入したもの)
3.Holbein Artists Gouache(ホルベイン アーチストガッシュ)は、発色が良いです。色もバリエーションが多いです。難点はなぜかチューブの中で固まりやすいことでしたが、2020年4月現在はチューブが変わっていますので改善されているかもしれません。(写真は2015年に購入したもの)
4.Rowney Egg Tempera(ラウニー エッグテンペラ)は価格が高かったです。何十年も前に買いましたが、それでも1本1000円でした。透明絵の具のような書き味で、下地がよく透けて、白を混ぜても変化が少なかったため、不透明絵の具のテクニックでは扱い難い印象があります。2020年4月現在では、社名がデーラー・ラウニーに変わっています。(写真は2000年に購入したもの)
ガッシュ絵の具の寿命
そもそも使用期限があるのかという問題ですが、各メーカーそういった期限は設定されていないようです。
個人的にもチューブの中で固まりさえしなければ、ほぼいつまででも使えるのではと感じています。実際、20年前に買ったチューブでも普通に使えます。
チューブの中で固まるのを防ぐためには、キャップのねじ部分を良く拭いてきれいにしてしっかり締め、乾燥を防ぐために密閉容器に入れることをお勧めします。
クーラーの効いている部屋にそのまま置いておくと、どんどん固まっていきますので、密閉容器に入れたのち、引き出し等に入れておけばさらに安心です。
大切な画材ですので、最後まで固まらずに使い切りたいものです。(固まって使い切れずにカドミウム系の高価な絵の具を途中で捨ててしまったことは何度もあります。)
また、絵の具を購入した際には、チューブ本体に油性ペンで購入日を記入しておくと、古いものと新しいものが一目で分かりますし、大切に使おうという気持ちにもなるかもしれませんね。
ガッシュ絵の具でグラデーションを立体的に見せる応用テクニック
ガッシュ絵の具等の不透明絵の具を使って、より立体感やなめらかな奥行きを感じさせるようにするためには、グラデーションの応用テクニックとして次の二つがあります。
その①、必ず黒を混ぜた濃い色から始める。
その②、最後は限りなく白に近づける。
この①と②の差が大きいほど、グラデーションは立体感が増し、自然な奥行きが表現できるようです。
それぞれ詳しく説明していきます。
その①、必ず黒を混ぜた濃い色から始める。
塗ったときに立体の影となる部分になりますので、思いっきり暗い方がよいです。
しかし、一番暗い黒一色だけで他の色を混色しないでいると、白を混ぜていったときにグレーにしか変化しません。これではあまり面白くありません。
そこで、グラデーションの最初の色は黒一色で始めてもいいですが、次の段階では各色系(赤や青や緑などの)一番濃い色を何色か選んで、黒に少し混ぜます。そうすると、白を混ぜていく段階になっても、単純なグレーではなく、赤系や青系や緑系などに派生していく多彩なグラデーションができます。
エクセルで内容を単純化してみました。
また、薄い色からグラデーションを始めると、あまり立体的に見えません。非常に淡い軽い感じとなります。
グラデーションは基本濃い色から始めるようにしましょう。
※黒の違い(ジェットブラックとランプブラック)
単純に黒を混ぜると言いましたが、黒にも成分の違いによりいくつか種類があり、それぞれ効き目が違います。ガッシュ絵の具ではジェットブラックやランプブラックと呼ばれるものがあります。その違いを説明するために簡単な一覧表を作ってみました。
黒の違い一覧表
ジェットブラックの方がランプブラックより効き目が大きいです。少量混ぜるだけで黒くすることができます。
また、絵の具のチューブには大抵、PBK1やN1.5などの英語と数字が記載されています。
それぞれ意味がありますが、黒の中で比較する場合には、数字が小さい方がより黒いと覚えておけば、どちらがより黒いかの判別に役立ちます。
※ジェットブラックが良い
実際にジェットブラックとランプブラックを使用した際の違いを、エクセルで内容を単純化してみました。
同じ黒でもこのような違い、特徴があります。
その②、最後は限りなく白に近づける。
塗ったときに立体のハイライトとなる部分になりますので、限りなく白に近い方がよいです。この色の白さ加減でなめらかで自然な奥行きとなるか、少し粗い表現になるかが決まります。
ただし、チューブから出した白をそのままで使ってしまうと、その前に塗った部分と差が付きすぎて、グラデーションの連続性が途切れたように見えてしまいます。
特に白の部分の面積が広い場合は、そこだけ真っ白で、逆にべた塗り感が出てしまいます。
グラデーションの最後まで、前の色に白を足して混ぜるという作業を続けましょう。
※白の違い(チタニウムホワイトとパーマネントホワイトとジンクホワイト)
単純に白と言いましたが、白も黒と同様に成分の違いによりいくつか種類があり、効果が違います。ガッシュ絵の具ではチタニウムホワイトやパーマネントホワイト、ジンクホワイトと呼ばれるものがあります。その違いを説明するために簡単な一覧表を作ってみました。
白の違い一覧表
チタニウムホワイトが最も効き目が大きいです。少量混ぜるだけで白くすることができます。最も効果が小さいのがジンクホワイトで、その中間がパーマネントホワイトです。
また、絵の具のチューブには大抵、PW6やN9.7などの英語と数字が記載されています。
それぞれ意味がありますが、白の中で比較する場合には、(黒の時とは逆に)数字が大きい方がより白いと覚えておけば、どちらがより白いかの判別に役立ちます。
※チタニウムホワイトが良い
実際にチタニウムホワイトとジンクホワイトを使用した際の違いを、エクセルで内容を単純化してみました。
同じ白でもこのような違い、特徴があります。
まとめ
まとめますと、ガッシュ絵の具(不透明絵の具全般)でグラデーションを立体的に見せる応用テクニックは、最初に黒はジェットブラックを混ぜ、白くするにはチタニウムホワイトを使うと良いということでした。
次回はさらに詳しい内容を説明していきます。