この記事の目次
絵の構想について
絵を描くときにイメージやテーマはどうやって思いつくのか?
構図はどのように決めたらよいのか?という質問をよく見かけます。
イメージやテーマや構図といった、大きな意味で絵の構想を練る際に必要な事柄を今回は説明したいと思います。
下書きをする
何を描きたいかイメージをわかせるために、まずは下書きをすることが必要です。
下書きは別の紙でも良いし、本番用の画面を使用しても良いです。
アナログ絵画の場合、とにかく手を使って何かに描くという行為が重要で、描いているうちに脳が刺激されてイメージが膨らんできます。
下書きをする際は、できるだけリラックスしながらも集中できる環境が望ましいです。
リラックスするためにコーヒーを飲んだり、好きな音楽を聴いたりしながらも、一人で没頭できるスペースがあれば尚良いです。
このような環境があれば、朝・昼・夜 どのような時間帯であれ、すっと下書きに入ることができます。
このような環境が準備できない場合は、できるだけ静かな夜間が下書きに適しています。
下書きからイメージを得る方法
何を描くか決まっていない時、これから絵を描こうとしている時、画面は何も描かれていない状態、つまり真っ白の状態です。
この真っ白の状態は非常に心地が悪く、また何も進みません。
とにかく何か描いて絵を始めたいけれど、何を描いたら良いかわからない。
そんな時にはまず、画面を4分割して、中心を見つけて下さい。
画面を4分割して、中心を見つける。
①画面の縦・横の寸法を測り、それぞれの寸法÷2で真ん中に軽く印をつけます。
②印をつけた対辺に向かって真っすぐ線を引きます。(線はうすく引きます)
これで画面が4分割されます。
③縦と横の中心線が交わる部分が画面の中心です。
これで真っ白な画面に道しるべができました。
描きたいものを配置する(構図)
描きたいもの(人物・鳥・動物・物体・図形など)を、4分割した画面に薄く下書きします。
中心と4分割線がありますので、それを利用して、どれぐらい中心から離すか、近づけるか、ざっくりと決めます。
非常に簡単ですが、これで基本的な構図は完成です。
描きたいものを描いてみて、もう少し右寄りにしたいといった希望があれば、その時は
描いたものを消して、また描きます。
消す際には、4分割線まで完全に消してしまわないように気を付けます。
①描いて→②遠くから全体を眺める→③気に入らない部分を消す→④また描く→⑤また眺める→⑥また消してみる→⑦繰り返し
この一連のサイクル作業が脳を刺激し、イメージを膨らませるのに役だちます。
描きたいものの大きさを変える
構図を考える時に、描きたいものの大きさも同時に考えるようにします。
描きたいものを画面いっぱいに大きくしたり、その反対に小さくしたり、二つ並べてみたり、逆さに描いてみたりします。
実際に下書きを描いてみて、眺めてイメージとしてどうなるかとらえます。
ここでもいろいろ試してみて、気に入らなければ消してを繰り返します。
一例です。
画面をさらに分割してみる
4分割した画面にさらに線を足して、様々な構図を作り出すことができます。
1.対角線を追加
ここに描きたいものを配置
2.斜め線を追加
ここに描きたいものを配置
3.さらに線を追加
ここに描きたいものを配置
4.象徴的な線を追加
ここに描きたいものを配置
このように画面に線を追加して分割するだけで、さまざまな構図を生み出すことが出来ます。
さまざまな構図に派生していく際にベースとなるのが、最初に描いた4分割線です。
円を描いてみる
分割した画面に、円を加えることで目を引く構図を作り出すことができます。
円は不思議な図形で、なんの変哲もない画面でも、一つ加えるだけで何か特別な意味が付け加わったような印象を与えることができます。
画面に残った線を活かす
以上のように下書きで描いたり消したりを何度も繰り返していくと、どうしても画面には前の線がうっすらと残ります。
このうっすらと残った線がミソで、軌跡が混ざり合って新しい図形が生まれたり、新たなイメージに結び付くきっかけになったりします。
最終的には要らない線はできるだけ薄くなるまで消し、活かしたい線は濃い目に描いて区別します。色付けの際に間違えないようにするためです。
構想を固める
下書きの画面は遠くから眺めたり、画面全体を写真に撮って客観的にどう見えるかを考えます。
特に最近はネット映えを意識して、サムネイルにした時に見栄えが良いか、目を引くかを十分考慮します。
このように下書きを眺める/見る/描いたり消したり/別の形状を連想するなどしながら描きたい絵の構想を徐々に固めていきます。
考えが煮詰まったら
下書きを何時間も眺めたり、描いたり消したりしながら構想を練っていくと、どうしても考えが煮詰まってくるときがあります。
もう何も考えられなくて、頭がぼーっとしてきたら、そのまま目をつぶって少し寝て下さい。
再び起きたときには頭がきれいにリセットされ、クリアな視点で再び下書きに向かうことができます。
ポイントは考えが煮詰まるまでとことん画面と向き合うということです。
最後の手段
一旦は出来上がった構図に対して、どうしても気に入らない場合がある場合。でも最初からやり直すのが難しい場合には、後から画面をカット(トリミング)してしまうという方法もあります。
この方法を覚えておくと、構図の取り方の失敗をそれほど気にせず、思い切って絵を進めることができます。
構図の使い道
描いたり消したりを繰り返して出来上がった構図は、一つの作品だけでなく、別の作品にも応用、転用することができます。
せっかく苦労して作った構図ですから、気に入った構図は、モチーフを変えたり、色を変えたり、組み合わせたりしていろいろ使いまわしてみたいものです。
実際例
1.最初は落書き程度から下書きを始めます。何を描きたいかを探る状態です。
2.一旦画面全体に描き込みします。
3.線を消したり、付け加えたりして試します。
4.うっすらと残った軌跡を活かして別のイメージに繋げます。
5.いろいろなイメージを追加して、最後にまとめます。
※下書きは消した線・選んだ線がいっぱいです。
いろいろなキャンバスの形
最後にいろいろなキャンバス(広い意味での画面)の形をご紹介します。
キャンバスには固有のモチーフにあった比率・形状のものがあらかじめ用意してありますので、定形サイズのものを選ぶのも構図を決める際の助けとなります。
また、慣れてきましたら、時には定形外の今まで使ったことがない比率・形状のものを選んでみると、より表現の幅が広がると思います。
・長方形(人物)(風景)(海景)
最も一般的な画面です。描きやすいです。
・正方形
真四角なものはデザイン的に安定感があります。シンメトリーな構図が付けやすいです。
同じ真四角でも、90度傾けるだけで神秘的な形になります。
・円形、楕円
真円は少し難しそうですが、宇宙的なモチーフが描けそうです。
横向き楕円は、広がりのある風景などが描きやすそうです。
縦向き楕円も、肖像画などに向いてると思います。
・三角形(多面体)・棺形
こういう図形に絵を描いてみるのも楽しそうです。
・教会型(三角屋根)
この形はイコンや聖書やキリスト教に関連した絵を描くのに適しています。
祭壇型(3つ折り)
観音開きにして、3面に絵が描けます。
両側を閉じて、表面にも絵が描けます。
大作向けの画面と思います。
有名なヒエロニムス・ボスの『快楽の園』もこの構造です。
ドーム型(天井画)
いつかは天井に描いてみたいですね。
西洋絵画にいくつか有名なものがあります。
ふすま型(ふすま絵)
画面が大きいので、のびのびとした構図を選べます。
2枚で一組ですが、左右に渡って連続して描いてもきれいです。
柱型(湾曲)
柱など湾曲したものに描いてみることも、構図を練る訓練になると思います。
このように、色々な画面がありますので、構図に行き詰まったら、今まで描いたことがない画面に挑戦してみても面白いかと思います。
~END~