抽象画にもいろいろあって、人それぞれ描き方があります。
自分の場合は、西洋中世の写本絵画(medieval manuscript)からヒントを得たものが多く、教会や十字架、聖なるもの、邪悪なものを平面的・幾何学的に描いています。
リズムや整合感やパターンを重視して描いており、普段聞いている音楽からの影響もあります。
そんなLin Zhangzhi流の抽象画の描き方をご紹介致します。
題名はUr.Sick (UrはYou areの略語)で、直訳すると”お前は病気だ!”になります。
BLACK SABBATHやOZZY OZBOURNEの歌詞やタイトルに出てきそうな題名ですが、これを描いている間はずっとParadise Lostの「ICON」をBGMで聴いていました。ちょっと暗くて危険な香りを感じていただければ幸いです。
それではUr.Sickの描き方です。
1.下書き①
- 画面の中心点を見つけます。
- 画面に対角線を引きます。
- 魔法陣をイメージして画面中央に多角形の図形を書きます。(大正方形を2個、90度位置をずらして配置)カオスの八つの矢のような正八角形ができます。
- 四隅は大理石のタイルをイメージして図形を書きます。(小正方形を4個)
- それぞれの図形には縁取りをして(線を二重にする)、くっきりと目立つようにします。(中世写本の枠線を手本にしています)
- 魔法陣中の三角地帯にある八つの目は、ホルスの目(フリーメイソン)をイメージしました。
2. 下書き②
- (左図)魔法陣中央に病原菌をイメージした円を放射状に描いていきます。
- 四隅の正方形のなかにも病原菌を散りばめます。
- ホルスの目の左側には、月をイメージした円を描きます。(下書き③で消去)
- ホルスの目の右側には、サタンや黒魔術をイメージした角を描きます。
- (右図)魔法陣にさらに病原菌を敷き詰めます。
- ホルスの目の右下にも病原菌を一つ描きます。
3.下書き③
- 下書き②で描いた月の円を消して、サタンの角に変更します。
- 魔法陣に病原菌をさらにびっしりと敷き詰めます。
- 魔法陣の枠線の中にも病原菌を描き込みます。
4.色付け①
-
正八角形の枠線を塗ります。
-
枠線は外側から内側にかけてグラデーションをつけます。
-
黒色から塗り始めて、次に濃青色を混ぜ、そこから白色を少しづつ混ぜて最後はかなり白に近い青色となります。最終の色は今は目立ちませんが、次に黒色を塗って隣り合った時に境界線が際立って効果が出てきます。
5.色付け②
- 上と同じ色で、内側の枠線を塗ります。
- 上とは逆に、内側から外側にかけてグラデーションを付けます。
- 外側の枠線と対比するように、グラデーションを付ける方向を内向けに決めます。
- 色の配置は意味と規則性を持たせることが特に重要で、往々にして理論を逸脱します。
6.色付け③
- 紫色で外枠線を塗ります。
-
外側から内側にグラデーションを付けます。
- ここでの色の配置は、魔法陣の青とは別の独立した小空間であることを示すため、紫色となります。
7.色付け④
- 同じく紫系の色で、目のまわりの枠線を塗ります。
- 外側から内側にかけてグラデーションをつけます。
- ここの色の配置は、四隅の正方形空間と共鳴するように同系色となります。
8.色付け⑤
- 太枠線の中を塗ります。
- 外側の太枠線は赤系の色で、外側から内側にかけてグラデーションをつけます。(黒色から塗り始めるので、①で塗った最終の青白が隣り合って、くっきりと境界線が際立ちます。)
- 内側の太枠線は赤茶系の色で、内側から外側にかけてグラデーションをつけます。(ここも黒色から塗り始めるので、②で塗った最終の青白が隣り合って、くっきりと境界線が際立ちます。)
9.色付け⑥
- 目を塗ります。
- 眼球の黒目部分は、青系の色で中心に向かってグラデーションをつけます。
- 眼球の白目部分は、紫系の色で両側と中心からグラデーションをつけます。
10.色付け⑦
- 八つの目の周りを塗ります。
- 外側から内側にかけて、黄色系のグラデーションを付けます。
- 外側は黒色から塗り始めるので、④で塗った最終の紫白が隣り合って、くっきりと境界線が際立ちます。
11.色付け⑧
- 魔法陣の中央と4隅の正方形の中央にある円(病原菌)の色を塗ります。
- 円の外側から中央に向かって濃紺色のグラデーションを付けます。(グラデーションの効果で下書きでの平面的な円形は、手前に盛り上がった球形に変化します。)
12.色付け⑨
- 魔法陣と正方形のの中の円形をさらに塗り進めます。
- グラデーションはすべて円の外側から中心に向けて付けます。
- 色は左右対称、対角線、一つ飛ばしなど、配置する位置に規則性を持たせます。(ランダムに色を配置すると神秘性が失われると信じています。)
13.色付け⑩
- さらに円形を塗り進めていきます。
- この時も色の配置には、規則性を持たせます。
- 配置の規則性によって、球形の病原菌は、分子配列のような美しさを持ちます。
14.色付け⑪
- さらに円形を塗り進めていきます。
- 円は大きくても小さくても、外側から内側へのグラデーションを堅持します。
- 色のバリエーションが尽きてきそうになりますが、何とか今まで使っていない色を探し出して塗り進めます。
15.色付け⑫
- さらに円形を塗り進めていきます。
- 円と円の隙間部分も根気よく球形グラデーションで埋めていきます。
- 隙間が究極に狭くなってくると塗らなくても下地の色(クリーム色)が徐々に輝いてきます。
16.色付け⑬
- 魔法陣と四隅の正方形の中には、まだまだ塗っていない隙間部分がありますので、根気よく塗り進めます。
- 塗る球形は究極に小さくなってきますが、外側から中心へのグラデーションは堅持します。
- 小さい球形はおのずと白い部分が目立ち、発光するように見えます。
17.色付け⑭
- 魔法陣と四正方形の中を完全に球形(病原菌)でびっしりと埋め尽くします。
- 隙間も全て極小球形で埋め尽くしたことで、白く輝き小宇宙のようです。
- 目を凝らしてずっと見ていると、奥から手前にふつふつと湧き上がってくる視覚効果があります。
18.色付け⑮
- 魔法陣の中から枠線の中へと球形を塗り進めます。
- ここでも色の配置には規則性を持たせます。
19.色付け⑯
- 魔法陣の枠線の中は緑系の球形で塗ります。
- 魔法陣と四正方形の間の空間は、赤系で塗ります。毒された血液を表しています。
- この赤系のグラデーションは、できるだけディープ色とミドル色の比率を多くして、ぎりぎりまで白化を抑えています。そのため毒々しさがあります。
20.色付け⑰
- さらに毒球を塗り進めます。
- 色は赤系を堅持しながらも、オレンジ色寄りやピンク寄りなど少しづつバリエーションを持たせます。
- 球形は大きくても小さくてもすべて中心に向かってのグラデーションです。
21.色付け⑱
- 隙間を小型の球形で埋めていきます。
- 大中小の球形は全て赤系の色です。
22.色付け⑲
- 赤毒球で隙間を埋め尽くす前に、サタンの角を塗ります。
- 角のねじれている部分は緑青系の色を塗ります。異常さを表しています。
- だんだんと球だらけになってきて、完成が待ち遠しいです。
23.色付け⑳ 完成
- サタンの角周りの空間を完全に極小球で埋め尽くします。
- 極小で白味を帯びて点描のようにも見えますが、下図のように拡大してみると全て中心に向かう赤系のグラデーションです。
- 以上でLIn zhangzhi流 抽象画の完成です。