ヒエロニムス・ボスの(ような)炎
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こんにちは。管理人のりんです。ご訪問ありがとうございます。
今回のブログはヒエロニムス・ボスのような炎の描き方についてです。
ヒエロニムス・ボスの絵といえば、他の人はどこに惹かれるか分かりませんが、私はいつも彼の描く炎に惹かれていました。彼の絵の中には、火を噴く山・火を吐く人・お腹から炎を見せる怪物など、炎に関する表現が盛りだくさんです。
そのボスが描くような炎をグラデーションで再現できないものかと、これまでにもいろいろと試行錯誤してきましたが、あまり納得のいく出来栄えではありませんでした。ところが最近になってグラデーションで再現ができる色設定を見つけましたのでご紹介していきたいと思います。
炎の混色セットリスト
使用する色は1.から4.の4色。
この4色のみを使用して(ボスふうの)炎のグラデーションを作り出します。
1.ジェットブラック JET BLACK 十六進の色コード #0e0e10
漆黒
2.オーバージーン AUBERGINE 十六進の色コード #4C2D49
濃い赤紫
3.ガーネット GARNET 十六進の色コード #942343
暗い黄みの赤
4.カドミウムイエロー CADMIUM YELLOW 十六進の色コード #fac61e
鮮やかな緑みの黃
実際に使用したガッシュ絵の具
絵の具メーカーについては特に一つにこだわる必要はなく、異なるメーカー品同士でも調色が可能。
炎のグラデーション、下書き
目指す炎は、四角い枠の中から燃え盛る炎が見えているイメージです。
ボスの絵では、地獄の門の炎や、悪魔がお腹を開いて炎を見せているシーンを想像してください。
- 仕上がり状態を頭の中でイメージしながら、輪郭線とどのようにグラデーションを付けていくかを鉛筆等でキャンバスに下書きをします。
- 炎は暗い部分(外側)から徐々に内側にかけて明るくなるようにグラデーションを付けていきます。
注:慣れてくると輪郭線(今回は四角枠)のみを下書きをして、グラデーションは下書きなしの一発勝負フリーハンドで塗れるようになります。
下書きイメージ 仕上がり画像
今回はグラデーションを10段階で変化させるようにします。
炎のグラデーション、混ぜ方・塗り方
セットリストで準備した4色を以下の手順に従って混ぜ、作った色を下書き線に沿って塗ります。
作業全体で68工程あります。
- ジェットブラックを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- ジェットブラックに溶き油(卵テンペラメディウム)を1滴(約0.05ml)垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。粘度は筆を持ち上げても自然には垂れてこない程度になる。
- 枠線と炎の外側を塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、オーバージーンを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。(粘度が低く移し替えられない時は移し替えずに使う)
- パレットに出したオーバージーンを半分ほど筆ですくい、移し替えた色に軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1滴(約0.05ml)垂らす。(絵の具の粘度が低く、筆から垂れてしまうような状態の時は入れなくても良い)
- 筆で均一になるように良く混ぜ合わせる。
- 混色した色を塗る。塗っている途中でかすれてきたら、再度筆に色を含ませて塗り続ける。
注:下書き線から少々はみ出したり、区分①と少々重なってしまっても問題ありません。
隣り合う区分は色差が小さく、遠目から見ると多少のズレは全然分かりません。 - 塗り終わったら、一旦筆を置き、ガーネットを小指の爪四分の一ほどの大きさ(極微量)でパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- パレットに出していたオーバージーンの残り2/3ほどを筆ですくい、移し替えた色に軽く混ぜる。(乾燥が始まって固まりかけている部分はすくわない)
- ガーネットを筆先1mmほどすくい、軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。(色の粘度は乾燥が進行するに従い高くなり固くなるため、溶き油の量で塗りやすい粘度に調整する)
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 混色した色を塗る。色がかすれて来たら、再度筆に色を含ませて続行する。色の伸びが悪く、粘度も高いと感じられる場合は、さらに溶き油を1滴追加して混ぜ合わせ、色の粘度を下げた状態で塗る。
- 塗り終わったら、筆を一旦置き、ガーネットを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- パレットに出していた微量のガーネットを全部筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 新しくパレットに出した方のガーネットを半分ほど筆ですくって軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 混色した色を塗る。色がかすれて来たら、再度筆に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、カドミウムイエローを小指の爪四分の一ほどの大きさ(極微量)でパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- パレットに出していたガーネットの残りを筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- カドミウムイエローを筆先1mmほどすくい、軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 色した色を塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、カドミウムイエローを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- パレットに出したカドミウムイエローを半分ほど筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 混色した色で塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、カドミウムイエローを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- カドミウムイエローの残りを筆ですくい、軽く混ぜる。
- パレットに出したカドミウムイエローの半分ほどを筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 混色した色で塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置く。
- このころになると筆の根元に使いきれなかった混色分がダマとして残る。これが色混ぜ時に混入すると色が濃く濁る原因となる。少し手間がかかるが、ダマ部分をティッシュで取り除く。(グラデーションの終盤は濁りのない明るさを保てるように)
- ダマ処理が終わったら、カドミウムイエローを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- カドミウムイエローの残りを筆ですくい、軽く混ぜる。
- パレットに出したカドミウムイエローの半分ほどを筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる
- 混色した色を塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、カドミウムイエローを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で数回パレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。
- カドミウムイエローの残りを筆ですくい、軽く混ぜる。
- パレットに出したカドミウムイエローの半分ほどを筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- 混色した色を塗る。色がかすれて来たら、再度筆先に色を含ませて続行する。
- 塗り終わったら、一旦筆を置き、カドミウムイエローを小指の爪半分ほどの大きさでパレットに出す。
- 塗りに使った色を筆で1回だけパレット上からすくい取って、パレット上のまだ汚れていない部分に移し替える。(次の最終グラデーションで、ほぼカドミウムイエローのチューブから出したそのままの色にまで近づけたいので、前回使った色をすくう量は最も少なくする)
- カドミウムイエローの残りを筆ですくい、軽く混ぜる。
- パレットに出したカドミウムイエローをほぼ全部筆ですくい、移し替えた色と軽く混ぜる。
- 溶き油(卵テンペラメディウム)を1~数滴垂らす。
- 筆で均一に混ぜ合わせる。
- まだ塗れていない最後の部分を全て塗り終える。
- 塗り終えたら筆先をティッシュでぬぐい、筆洗容器に入れた水で筆先をよく洗い、ティッシュで再度ぬぐって筆に付いた色を落とす。(3回ほど繰り返す)
以上の作業工程を経て完成です。
イメージ図 実際の画像
- 繰り返しの工程も多く、慣れれば地味で単純な作業です。
- おおよその所要時間は2時間弱。(塗る範囲の大きさによっても多少変化する)
- 今回のグラデーションで作った色変化は以下の10段階。
このグラデーション混色手順・塗り手順でボス風の炎が表現できます。
おまけ ~FAQ~
グラデーションについてのよくある質問とその回答をまとめました。
- Q1:塗っている最中で作った色を使い切ったらどうするの?
- A1:グラデーションの途中で色を使い切るとまた振り出しから作り始めないといけないので、使い切らないようにします。
具体的には、使い切る前に溶き油をどんどん追加します。溶き油を追加してカサを増やし、最悪の色切れを避けることができます。かなり粘度は下がりますが、それによって色が完全に薄まってしまうことはありません。
もともと顔料の量が多いので、溶き油を多く入れても色が薄くになりにくく(不透明で)、下地は透けすぎずに塗った色で隠れます。
そのためグラデーションの最初と最後で色の濃淡が全然違うということになることが少ないのです。
安心してカサ増しを行い、色切れが起こらないようにして下さい。
- Q2:グラデーションはどこまで細かく変化させればよいの?
- A2:表現したい目的に合わせて、変化段階を決めましょう。
グラデーションの段階は多ければ多いほど、なめらかな変化で優雅な印象を与えてくれますが、その分時間と根気が要ります。
また細かすぎても目で色差があまり認識できないこともあります。ある程度の目に見える色の落差がある方が、はっきりした遠近感を表現することができます。
西洋中世の写本絵画のなかには、たった3段階ほどの変化でも強烈な印象を与えるグラデーションの表現があります。
表現したい目的や自身の技量に合わせて、変化段階を決めましょう。
© 2022 りん